ドイツで生まれ、ドイツの住宅の約6割に使用されている「オガファーザー」。
塗装の下地用壁紙としてドイツの壁紙市場で長い間トップシェアを誇っています。再生紙からなり、いずれ土へと還るエコロジーな壁紙で有害物質を含みません。
“森から生まれた呼吸する紙クロス”と表現され、上から塗装するだけでメンテナンスも容易で、人にも環境にも優しい壁紙です。もっとも大きな面積を占め、室内環境に大きな影響を与える壁や天井に最適で、自然素材ならではの良さを感じられます。
近年では、ビニールクロスと同じようなテクスチャーデザインが増えインテリア性も高いため、日本でも注目を集めはじめている「オガファーザー」についてご紹介します。
ドイツで紙クロス(壁紙)が多いのはなぜ?
ドイツで使われる壁紙の種類は主に下記の4種類で、日本とほとんど違いはありません。しかし、ドイツの住宅には再生紙やウッドチップから作られた壁紙(クロス)の採用が多く、ほかの素材、とくにビニールクロスが選ばれることは多くありません。
- 天然素材(ジュートや和紙、綿など)からなる布クロス
- 紙クロスやオガファーザーのような塗装下地クロス
- ガラス繊維などの無機繊維のクロス
- ビニールクロスに代表される化学合成されたクロス
ヨーロッパの周辺国に比べて短いといわれるドイツの住宅寿命は約70年。 日本の住宅寿命は約35年でそれよりさらに短いと言われています。 ドイツに限らずヨーロッパ諸国では、古い建物を改修し手入れして大切に住み継ぐことで、住宅の寿命を長く保っています。そのため、補修やDIYがしやすく長く保つ素材が好まれ、塗装や漆喰などで仕上げられることが一般的です。
ドイツでは、1970年代後半から新建材による室内空気汚染が健康面に影響を及ぼすという「シックビルディング症候群」の認識が広がりはじめていました。食品や衣類など、身の回りのものをエコ、オーガニック、フェアトレードなどの観点から選ぶのと同様に、オガファーザーのようなエコ素材の紙クロスが1980年代に当たり前のように使われるようになりました。
一方、1960年代から高度経済成長期を迎えて着工棟数が急激に増えた日本では、大量生産ができる新建材が多く使われています。2021年を迎えた今も安価で施工のしやすいビニールクロスが壁紙市場の95%以上を占めています。住まい手が環境面や健康面を重視して壁材を選ぶということはまれで、建築業者からの提案がなければ、ビニールクロス以外の選択を考える機会が少ないのが現状です。
どの国においても、住まい手は壁紙の選択をする際にコスト面も考慮します。ドイツでは専門業者の工賃が高く、なるべくコストを抑えるために自分たちでできる内装仕上げを選択するという考え方が根強くあります。紙クロスは、ホームセンターに様々な種類が陳列され価格も入手しやすいだけでなく、貼るだけで塗装用に難しい下地処理をする必要もありません。 壁紙が汚れた場合や模様替えをする際に、“塗料で塗り替えるだけ”という手軽さもビニールクロスよりもオガファーザーのような紙クロスが好まれる理由の1つです。
自然塗料で壁紙を塗装するメリットとは?
オガファーザーは、再生紙にウッドチップとセルロース繊維に近隣の川から飲料水レベルの自然水を利用するなど、全て再生可能な資源により150年以上前から製造されています。一度貼るとメンテナンスは上から塗装するだけなので、壁紙を剥がすことはありませんが、廃棄時には土に還り有害物質を出すことはありません。
安全な原材料と環境負荷の少ない工程で作られたオガファーザーは、ビニールクロスにはない高い透湿性能(呼吸性)があり室内の湿度を自然に調整する機能があります。静電気の発生もほとんどなく、そのため汚れを寄せつけにくい素材でもあります。 塗装で仕上げる場合は、塗膜をつくる合成樹脂塗料だとせっかくの機能を妨げてしまいます。紙クロスの特性を生かすために、呼吸性を妨げない自然塗料がおすすめです。
オガファーザーには、ドイツの自然塗料のパイオニアであるリボス社のデュブロン(ウラ)での塗装を推奨しています。漆喰とよく似た水、石灰、亜麻仁油などの原材料でできており、壁紙の呼吸性を止めないだけでなく、自然素材ならではの美しい仕上がりとやわらかい手ざわりが特長です。塗装の際に、イヤなにおいがなくローラーや刷毛で塗るだけなので、お子様と一緒にDIYで塗り替えることもできます。材質はアルカリ性のため、アレルギーやカビの原因になる物質もほとんど発生しません。メンテナンスも上から塗るだけで、簡単に色を変えることもできます。
こちらのコラムもご覧ください>>「暮らしに合わせて色彩をコーディネートする」
時代やトレンドに左右されない壁紙
19世紀に製造が始まったオガファーザーは、建築様式が変化していく中でも残り続けている素材です。石油化学の発達により20世紀に生まれた、主成分が合成樹脂である「新建材」がドイツで定着しなかった理由に、古い建物のインテリアにはなじみにくく違和感が出ることや、木や漆喰壁のように手入れできないという点があります。
オガファーザーとデュブロンで仕上げた壁は、機能面のほかにビニールクロスや合成樹脂ペイントにはない、インテリアとしてのデザイン性の自由度の高さもあります。ドイツでは住宅だけでなく、ホテルやレストランなどの施設内でもオガファーザーをよく見かけます。 築100年以上の建物の改修にも当たり前のように使われています。
壁の表情は、ウッドチップの大きい素材感のあるテクスチャーから、フラットなものなどパターンで異なり、様々な印象に仕上げることができます。 無塗装でも表情があり魅力的な仕上がりですが、塗装を施すことによりさらに印象が変わります。天井や柱などにアクセントカラーをつけたり、同じ壁面にマスキングをして塗り分けたりしてデザイン性を出して楽しむこともできます。
また、自然塗料と合成樹脂ペイントでは、自然光の見え方や経年変化の具合も異なります。紙クロスと自然塗料で仕上げた壁には落ち着きがあり、木や漆喰が自然に朽ちて周囲の環境になじんでいくのに似た変化が見られます。
気になるテクスチャーはこちら>>商品一覧
まとめ
オガファーザーが21世紀になっても使い続けられているのは、単なるトレンドではなく、環境に負荷をかけない製造工程や、ゴミにならず、自然に還る素材で地球に優しい製品であることがエコ先進国で需要があるからです。
ゼロ・ウェイストや、サスティナビリティが叫ばれる中、今後さらに世界に広まり、未来にわたって使い続けられるスタンダードな素材になるでしょう。
オガファーザーの歴史をもっと詳しく>>ヒストリー